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「おもろいヤツ」File2:古宇田曜平(前編)


「ファッション」と聞いてあなたは何を想像する?ファッションショー、映画『プラダを着た悪魔』とかのキラキラしたイメージがパッと浮かんできたりして。じゃあ、ファッションと社会問題って言われてピンとくる?最近でこそ「サステイナブル」が叫ばれていて知るようになった人も少なからずいると思う。でもあまり詳しく知らない人も多いのでは?ファッション産業の闇っていうのは「Billie Zineの夜明け」の記事でも少し書いているけど、もっと詳しいことは他のメディアにも書いているからそっちに任せよう。

 

 今回はそんなファッション産業の抱える問題と戦う一人の若者に話を聞いてみたよ。彼の名前はヨーヘイ。「ファッションをサスティナブルに」というテーマでイタリア留学にいき、現在はコロナのこともあって一時帰国している。この絶好の機会を逃すわけにはいかない。ファッションの街ミラノから帰りたてホヤホヤのヨーヘイに直撃!


 

ファッションとは身近なアート



  

ファッションは衣食住のうちの一つという目で見れば誰にとっても関心のあることだろう。しかし彼のファッションに対する「好き」は人並外れている。そもそもなぜファッションが好きなのか。


 「ファッションは誰もが楽しめる可能性を持っていて、かつ自分の想像力を発揮できるものだよね。自分はゼミの研究テーマとして『ファッション』を選ぶにあたって、自分にとってのファッションとはなんなのかを考えたの。そしたら『ファッションは芸術の一つだ』という結論になった。一部の人を除いて、大体の人って最近何の絵を買ったとか、どんなコンサートに行ったとかいう話はしないじゃん。でも最近なんの服買ったとか最近どういう服装が好きっていう話は結構いろんな人ができる話なはず。少なくともファッションは、絵とか音楽とか彫刻とか、いわゆる『純粋な芸術』と言われて一般的な人は想像するものよりは、はるかにいろんな人が関わりやすいものなんだよね。そうであるにも関わらず、同じように芸術的な『何か』を感じることができる。最近コロナのせいで文化的な自粛ムード、つまり「人間が生きていくうえで文化はどうでもいいもので、経済とか社会保障とか医療とかそういうものだけを気にしていくべきだ」っていう風潮がある。「こんな時に文化の話をするのは不謹慎だ!」みたいな。でもそれに対して反発する人の言うことっていうのは、芸術っていうのは、人の心を豊かにするっていうこと。俺は全くその通りだと思っていて、同じことをファッションに対しても言いたい。ファッションは人の心を豊かにするんだよ。」




PHOTO:猫さえいれば生きていけるので1人でも平気で猫カフェに行く🐈。恥ずかしいとかは感じない。

 

ファッションに真正面から向き合う


  ファッションは人の心を豊かにする。全くそうだろう。でもその一方でファッション産業はビジネスの面も強くて、だからこそ環境問題とか労働問題とかを引き起こしている気がする。それに関してどう思う?


 「ファッションに対して偏見とか反感のある人なんかは、ビジネス的な方だけを見て批判しているよね。でもその対立を解消できれば、逆に多くの人が反感を持たずにファッションを自由に楽しむことができる。俺はその対立を解消することに将来関わっていきたいと思っているんだよね。で、俺の留学テーマにしている、サスティナビリティっていうのも、そういう方法で決めたものなの。ファッションは環境問題を引き起こしているということだけが取り上げられちゃうと、どうしてもファッションに対する反感がどうしても生まれてきてしまう。でも本来はまず消費者に、なんでそれが起きてしまっているのかを説明しなければいけない。最近では、この服はどこの国で取れたどんな原料を使ったもので、こういう工場で生産をして、こういう経路で運ばれてきましたって全部追跡できる仕組みもできてきたんだけど、そういう取り組みをもっと幅広くできたらいいんじゃないかなと思ってる。」


 でも、このファッション産業の抱える問題は果たして生産者のせいなのか、はたまた消費者のせいなのか、もはやわからなくなっている。変えるべきは消費者か生産者か・・・?


 「最近では消費者が声を上げている方が多くなっている気がする。それを受けて、生産者も変わろうとしているんじゃないかな。2020年はサステイナビリティがトレンドだってどこかの記事で書いてあったんだけど、それはなんでなのかっていうとそういう意識が消費者の中で生まれ始めているからだそうで。きっかけは色々あるんだけど、それはファッションに限らず、それこそグレタさんとかそういう環境に対する危機意識というのがいろんなところで叫ばれ始めて、そろそろ本当にアクションを起こさないといけないんじゃないかっていう声に感化される人が増えてきて、今まで環境問題にそこまで関心がなかった人でもちょっと何か変えてみようとかきっと思い始めているところだと思うんだよね。となると、今まで環境をめちゃくちゃにしてきたファッション産業も、何かせずにはいられんやろう、みたいなをのいろんな会社・ブランドの人たちが考え始めているんだと思う。」


 確かに、時代の風潮からしてもサスティナビリティがトレンディだと言える。コレクションをとってもボタニカル調のデザインやアニマル柄などネイチャームードが全開だし、トレンドカラーも昨年からグリーンとブルーが注目されている。


 「でも、俺がずっと思っているのは、サスティナブルはトレンドではなくて、今後もずっとスタンダードにしなければいけないということ。これを『こういう着こなし方かっこいいよね』みたいな一時期の流行じゃなくて、これからずっと続かなければならないんだ。」


ーー今年の4月、彼はCustomode(カスタモード)を立ち上げる。


 「大学でファッションの研究をしてて、どこかで自分が学んだことを形に残して世の中に発信する場を持ちたいな、と常日頃から思ってたんだよね。そこで、ファッション業界での出来事とか風潮みたいなのを客観的情報を交えて紹介しつつ、その背後にはこんな動きがあるんですよ、みたいな書き方をしたら読む人もちょっとは興味持ってもらえるし、自分も言いたいこと言えるしでいいのでは?ってことでこういうブログを始めてみた。

 ここでは流行のアイテム紹介とか、着こなし方指南とかはしないつもりだよ。それよりももっと長期的な目でファッションを捉えられるような情報をたくさん載せていこうと思ってる。さっき出たサステイナビリティとかまさにそういうものの例。「サステイナビリティって何?」というところからスタートして、その背景、具体的にファッションはどう変わっていくのか、とかそういうところまで今ある情報や知識を織り交ぜつつ自分なりの言葉でまとめて発信していくのがこのブログを通して僕がやっていること。

 ブログのタイトル、“Customode”は『習慣“custom”』と『流行“mode”』を合わせた造語で。僕がこのブログを書いている目的はここに全て隠されていると言っても過言ではないかもしれない。ファッションは世の中の大半のメディアが伝えてくれる流行だけではなく、むしろ習慣によって動いている部分が多い。しかも長い間支持された流行は習慣になって新しいファッションの世界を作っていくのだから、僕らはファッションの流行と習慣を上手く組み合わせながら語っていくことを意識しなきゃいけないなぁって考えてる。

 そんで、当たり前だけど良い習慣を増やして悪い習慣は減らしたいじゃん。だから良い習慣についてはそれが何で良いのかしっかり分析と説明をして、悪いものもなんで悪いのかをきちんと示してみせる。こうすることで最終的にはファッションをもっといい方向に向かわせたい!って思う人がこのブログをきっかけに一人でも増えてくれれば嬉しいな。」




PHOTO: こんな感じでサイトやってるよ。技術不s…見やすいページにするためにシンプルな構成で。https://customode.jp

 

ファッションで名を残すということ

 

 そんなに熱意を持ってカスタモードを立ち上げたけど、最終的な人生の野望ってあるのかな。気になる。

 「人生の野望っていうと、すごい根本的にあるのは、名を残したい(笑)。少し具体的にいうと、俺が死んだ時に、誰かに、いや、めちゃくちゃ多くの人に悼まれたいっていうのが根本にある。人の価値、人が生きる意味っていうのは、死んだ時初めてあると思うの。死んだ時に、どれだけ多くの人にその死を悼まれるか、どれだけ惜しまれるかが、その生きる意味だと僕は考えていて。なんで僕がそう思ったかというと、割とこれは最近の話で、1月、ちょうど俺が留学に行く1、2週間前のこと。俺ずっとバスケやってるんだけど、コービーブライアントっていう、有名なバスケ選手がいて、サッカーでいうとクリスチャーノロナウドとか、日本のスポーツ界でいるとイチローみたいな、ほんとそれくらいのレベルのスーパースターがいて。で、彼はちょうど4年前くらいに引退しちゃって、普通に家族と暮らす生活をしていたんだけど、今後もバスケとか関わり続けようって言って、第二の人生をスタートさせてたのよ。でも、その人が、1月の中旬に突然ヘリの事故で亡くなって。マジで衝撃的で、言葉を失うっていうのは、こういうことかって感じ。で、世界中の人がやっぱその死を悼んだんですよ。なんならバスケとは関係のない普通のニュースでも大きく取り上げられたりしてて。そこで、彼が生きた意味っていうのは、ここにあるんじゃないかなーって思ったの。やっぱその死んだ時になって初めて、その人が成してきたことの意味や価値がつけられると思ったの。そんで俺もそういう人間になりたいな、と。じゃあ俺はどうやって名を残せるかなと考えた時に、一番自分の力を注げるのは多分ファッションかなーと思って。ファッションの業界の中で、それだけ悼まれた人たちって、ココシャネルとか、イブサンローランとか、最近でいうとラガーフェルドとかそういう人になるのかな。俺はそれくらいにならないといけないんだよね(笑)でも大体の人たちってデザイナーなんだよ。なんでかっていうとそれは一番表に出るからじゃん。でも表に出なければいけないのかっていうと別にそういうことでもなくて。その人たちはたまたま表に立って主導していたから目立つだけであって、そういう人たちに協力して色々やってて、一緒に何かめちゃくちゃでかいことを成し遂げてきた人たちも絶対にいるわけじゃん。俺はそういう人でもいいかなと思っていて。今ちょうどファッションの歴史を勉強していて思うのは、やっぱりどっかに「ここで流れ変わったな」っていうターニングポイントみたいなものがある。それこそシャネルなんかを例に挙げると、それまではコルセットでぎゅーってウエストを締めて、スカートをブワーって広げて、髪バーンみたいな感じだったのが、シャネルの作った女性でも着やすい服だったり、実用的な服だったりを社会に提案したことで、女性だってもっと活発に動いて、男性と同じように働いたり遊んだりしてもいいんだっていう風潮がそこで生まれたんだよね。俺はそういうのがしたい。新しい価値を生み出したいね。」



PHOTO: 学園祭でイタリア語劇の主役をやってみた。これまで人前に出たくなかった自分の殻を少し破ったきっかけになった...!

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