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Turning points in my life


人生を旅に例えた時、それの転機は分岐点とも言うが、人生をあえて料理に例えるなら、それは人柄を形成する隠し味的なものである。他の人と変わらないなんて気持ちで接していたら、「おっと、この人にも何か奇想天外なものがある」と感じることがある。そういう時には“隠し味”をちょろっと教えてもらうといい。“料理”の腕前はこうやって上げていくのさ…!今回は日本、ドイツ、カナダを跨いだ5年間の高校生活を経て、現在はカナダのトロント大学でビジネスを学びながら自身のアート活動も広げている彼女の話を聞いてみる。既にやばそうな匂いしかしないが、筆者はこういうのが好み。


アート×ビジネス



——知咲の今やっているアートは鏡に絵を描くという新鮮な作風が魅力的だけど、あのアイデアってどうやって生み出されたの?

 あれは本当にたまたまなの。というのも前に住んでいた家の壁が一面鏡貼りだったのね。それはもうめっちゃ圧迫感があって、なんか可愛くしたいなという気持ちで葉っぱの絵を描いたのよ。で、なんかこれ面白いなと思って自分が描いている様子をタイムラプスで撮ってストーリーにあげた。そしたらすっごい反応があって。そんで前にリサイクルショップで買ったけど使っていなかった鏡(鏡はこれ以上いらなかった笑)に同じ絵を描いて15ドルくらいで売れたらいいなと思ったら、なんと六時間で全部売れたの。「あ、もうこれいけるじゃん」と思ってそこから始めたから本当に、たまたまだね。


——実用的なのも一つの魅力だよね。


 そうなのよ。しかも鏡ってそんなにコストもかからないの。材料費を抑えることで8割は利益になるようになってる。で、一応ちゃんと自分の人件費分は稼げるようにしたくて、こっちの最低賃金(時給)にはなるよう調整しているの。だからといってテキトーなことはしてられないから、物によっては時間をかけすぎちゃったりもするんだけどね。


——そこらへんもちゃんとマネジメントしているんだね。

 一応ビジネスを勉強しているからね笑。それに、自分の強みっていうのはそこにあると思ってる。インスタで作品を売っている人って、みんなアーティストであってビジネスマンじゃないの。だからみんな頑張る方向が“アーティスト”なのよ。どうやってフォロワーを増やそうかなって考えた時に、「じゃあもっといい絵を描こう」と彼らは考えるんだけど、私は「もっと戦略的に増やしていこう」ってなるから笑。カナダで過ごした最初の一年は美術系のプログラムに参加してて、そのプログラムに入っていた子は大抵高校卒業後に美術系の大学に行くんだけど、その中でいま絵でお金を稼いでいるのは私だけだと思う。別に私が一番才能があったわけじゃなくて、他にも絵がめっちゃうまいなって思う子もたくさんいたけど、儲からないんだよね。ビジネスの知識があるのに他の人よりも成功してないなんて自分はおかしいなと思うの。まぁ、それは自分にとってもプレッシャーなんだけど笑。

——アートを自分の力でビジネスにできるのって本当に強いよね。


 私がビジネスに進んだ理由っていうのも、将来何をやりたいかわからなかったからなのよ。たとえ芸術家になろうがマーケティングエージェントになろうが、派遣会社で働こうが、生物学者になろうが、どんな場面でもマーケティングは絶対に必要なの。だってどんなものでもビジネスだからね。だから何がやりたいかわからないからこそ、物事の基礎であるビジネスを選んだ。今はもちろんそっちに進んでよかったなと思っているよ。“ビジネスは現代のサバイバル術”。いや、やっぱこれオフレコで笑。



知が咲く



——今じゃバリバリ勉強している印象だけど、中学の頃とかを思い出すと、ちょっと考えられないね笑。


 毎回赤点を取っていたもんね。授業は聞いたら負けみたいな笑。高校でも卒業したらカナダにいく予定だったし、カナダは受験がないと思っていたから勉強はもういいやって思ってたの。でもカナダ行く前に、お父さんにめっちゃ脅されたのね。「俺なんか腰が痛くて手術したいのに、そのお金をお前に叩いてカナダに送っているんだから、お前ちゃんと勉強しろよ」って。「え、腰のお金…?」って感じだったけど、それがすっごいプレッシャーで、最初の1年はお腹がきりきりするくらい毎日勉強頑張った。でも後にあれは嘘だったことがわかってもうびっくり笑。帰国した時にそのことを聞いたんだけど、そしたら「は?なんの話?」って言われた笑。でも親はよく私のことをわかってるね。あれで私はすっごい頑張れたから。あの時頑張れたから自信がついたし、それも考えると感謝ですよ本当に。

 でも、私は高校時代が五年もあったから20歳になっても現地の16歳と一緒に勉強したり、日本の友達は就活したりしているのを見ていると本当に辛かった。私はもう落ちこぼれだと思った。だからこっちにある安くてテキトーな短大にいって就職すればいいやと思っていたの。でもその年の夏季講習で取っていた数学の最終スコアが98点ですごく良くて。というのも、今までバカな自分が恥ずかしくて質問さえできなかったんだけど、それを優しく受け入れてくれる先生に出会えたの。それで実は数学は苦手じゃないことがわかったし、勉強の仕方も知ることができた。それでこっちの進路相談の先生に、「こんなに成績がいいんだったら、そんなところに行かないでちゃんとした大学に行きなさい。だって、行けるよ?」って言われたの。その時初めて、「え、行けるんすか!?」って知った。だからそこからはそんなアホみたいなコースを取るのはやめて、2年目は特進数学コースを全部入れたんだけど、なんと最終コースの平均が90点台でGPAは4点以上。それでトロント大学に入った時にも成績上位者として30万円ももらってさ。すげーびっくりした。昔は分数もできなかったのにね。面白い話、私の知咲って名前、知識が咲くって書くのね。私、前までは名前負けしてるなって思ってたんだけど、知識咲きましたよ!名前の通りだ!笑



自分を受け入れる



——知咲からはすごい自信を感じるんだけど、それって本当に素敵なことだと思う。


 この前tiktokを見て気づいたことがあるの。アメリカで育った移民の子たちの「私の“白人になりたかった期間”から脱却する様子をご覧ください」っていう投稿が流行ってて、子供の頃からの写真をバンバン載せてくんだけど。確かにアフリカの子だったら最初は白人の着る服装をして、髪の毛も本当はクルクルなんだけどストレートにしたり、白人っぽいメイクをしたりするの。でも大人になるにつれてどんどんアフリカとか自分のカルチャーを受け入れてそれっぽい服を着たり、自分ならではの美しさを受け入れていたのね。それで自分のところにもその投稿がたまたま流れてきて、「ハッ!自分じゃん!」と思った。今まで自分は「日本から来たけどあんまり日本人じゃないです」ってよく言っていたのね。「私、バナナマンだから。外はイエローだけど、中は白人なの!」って笑。でもそのtiktokを見た瞬間、もっと日本人としての自分も大事にしたいと思って、最近だと髪を黒にしたり(めっちゃ気に入ってる)、ドラゴン柄の服を着たりしてアジアを意識し始めた。

 いる国によって自分の価値観ってガラッと変わるのよ。日本にいる間は、美白が絶対的なステータスで、体重は43kg以下が理想的でっていう考えが自分にもインプットされて、それがナチュラルな価値観になってた。でも、こっちに住んでから、「美白?何それ。焼けたほうがいいじゃん」ってなるの。周りの影響によっていいなって思うのが変わる感じ。じゃあなんで今は小麦色の肌がいいなと思うのかというと、そういうCMばっかり流れているから。生活のちょっとした所でも、浅黒い肌がいいっていうヒントがいっぱいあるから、そういう生活で何ヶ月か過ごすと、本当に変わるよ。日本の美容界は本当にtoxicだなって思うのね。不安を超煽ってくる。一番ショックだったのは、帰国した時にyoutubeで流れてきたダイエット商品のCM。たかが五千円くらいの商品を買わせるための悪徳なCMのせいで自分のことを嫌いになる人がいっぱいいると思うと、日本では人の不安を煽る風潮が許容されすぎてて本当に言葉にできないくらいありえないと思う。こっちにきてから、本当に価値観が変わって、日本にいた頃に信じていたことって全部嘘だったんだって思った。そしたらさ、それって嘘のスタンダードなわけだから、自分の体型が好きになれない辛さとか、今まで自分の欠点を責めていた時間とか、全部無駄だったってことじゃん。だから、みんな既に素敵なんだから、変わらなくていいと思うんだよ。

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